龍二はどこ?

6月2日、女装バーですっかり出来上がってしまいましたが、明日の朝が早いため果敢に電車で帰宅。
プリーツスカートをひらりと、そのあと、くりんと階段をおりて、トンと地下鉄に乗り込んだ。

自宅のある駅の改札出て、「今日は楽しかったね」とメッセをいれたところで、小柄な人影が近づいた。

「りゅうじ・・・(響きは龍二かな?)」
私に話しかけているの? このおばあちゃん。
しかし、龍二。。。せめて、龍子と言って、劉美でもいいわ。三国志みたい。
ひょっとして、プリーツスカートが戦闘モードの武装袴みたいに見えたのかしら。

「あら?私の事」
私はおばあちゃんに優しく話しかけます、でも、眼は怒っていたかも。
まるで、中年の娘が自分の母親に話しかけるように。

龍二、帰ってきたのね」
私の分身ってしのぎを削っているのかしら、しかも女装で。
早く、帰ってあげて。。。

「あばあちゃん、間違っていると思うわ、おばあちゃんの家はどこかな」

おばあさんは悲しそうな顔をする。
困ったなあ、とおもいつつ、
「だれかといっしょなの?」

と尋ねてみる、あたり見ても、家路にいそぐサラリーマンくらいしかいない。

まあ、こういう時は、駅員さんに相談するしかないなあと思って、

龍二と家に帰ろうか、おばあちゃん」と言って、そのまま、駅の管理室に連れていく、

「すみません(ちょっと声、高め)」
カウンターのところに、制服着たおねえさんが、こちらをちらりと見る。
いいな、あんな制服着てみたいという邪念を振り払いつつ、

もう一度、「すみませーーーん」

特に、異形の私に不信感を見せないで、

「あ、お待たせしました。。どうされました?」

平常な対応、さすが、日本のサービス業品質は高い。

「迷子だと思うんですよね」

ちょっと困った顔で言う。

「はあ、お名前を教えてくれます」

「純です」、いや、ここは女装バーじゃなかったんだ、っていうか、私が迷子じゃないし。

「こちらのおばあさんです」
私は連れているおばあさんの手をやさしくひっぱる。
おばあちゃん、恥ずかしそう。

駅員さんは、おばあさんを見ると、

「XXさんですね、あら。また来たの」

なんか驚かない。

「あれ。お知り合いですか」

私の質問に、「ときどき、徘徊して駅にくるんですよ、だれか駅で待っているのかな」

駅員さんはおばあさんの手をとる。

そうなんだ。ちょっとハチ公を思い出した、わんわん。
私は少し、死んだ自分のおばあちゃんのことを思い出した。

「こちらで自宅に連絡するんで、あとは大丈夫です。ご迷惑おかけしました」
駅員さんは丁寧に私に会釈する。
いいことをすると気持ちいい。私は少しルンルンと管理室から出ていきました。

よく考えたら、
不審者と間違われて、私の連絡先を教えることにならず良かったです。

ちゃんちゃん